研究概要 |
仕事と育児の葛藤への対処の実態と,夫婦の分担の実態,さらに,対処の場面で親族ネットワークが夫婦の分担にどのように関係するのかを明らかにした。子どもの病気時の世話について、夫婦の分担は妻に大きく偏っていること、社会的支援の取り組みは、医療施設での病児・病後児保育をはじめ、近年多様な形態で進展しているものの、子どもが病気をしたときの依頼先として祖父母の割合が最も高いことが認められた。妻方親族の育児援助と夫の育児参加の関係については、妻方親族との関係が緊密である場合、夫の分担度も参加度が低いという結果が示された。しかし、親族の援助は、夫の通勤・労働時間と夫の職場環境と有意に関係していることが認められた。そして、多くの場合、夫の職場環境や労働時間は、親族の援助の有無により変化するわけではなく、親族の援助に先行している夫婦の事情である。したがって、因果関係としては、夫の職場に柔軟性がなく子育てしにくい環境にある場合や夫の労働時間が長い場合に、夫の育児参加が困難になり、親族の担当の程度が高くなるという関係が推定される。したがって、親族の援助が夫婦の結束・共同を妨げるのではなく、夫の労働環境の影響から夫婦の共同が実現できないために、親族に援助を依頼するという解釈のほうが合理的であると思われる。首都圏の共働き夫婦を対象とした本研究では、91%が核家族世帯であり、親族からの作用の働きは決して強くはない。親族との関係よりも夫婦の結束を求める社会状況であるにもかかわらず、夫婦の分担状況をみると、子どもの病気のときの育児負担や保育園の送迎など、育児負担が妻に大きく偏っている。妻の負担軽減のためには、外部の支援もさることながら、夫の職場環境が育児との両立がしやすい環境に整備される必要があることが示された。
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