3歳未満児保育の行われている「保育所」と「乳児院」において心理的拠点形成がどのように行われ、そのための保育環境がどう工夫されているかを、保育所や乳児院における観察データを収集することにより考察した。 1.乳幼児の心理的拠点形成に関する先行研究の検討をおこない、調査仮説について考察した。その結果、「人」の位置づけについても、養育担当者、クラスの担任、継続して毎日かかわる朝パートの保育者と多様なランクや意味付けがあることがわかった。また、練馬区の保育園における観察では、保育環境を工夫し、一人一人が入室するときにすでに遊びをイメージし、遊びを選んで楽しめるようにすることによって、心理的拠点を作っていることが、観察データから示された。心理的拠点の形成と見通し能力の育ちが密接に関連しあっており、その育ちを支える保育環境のあり方が示唆された。 2.乳児院については、ドルカスベビーホームにてデータ収集を行った。入所して2日目から1週間の観察から、どのように誰に慣れていくのかについて分析した。また、厚生労働省の補助金事業として行われている小規模グループケアが、大所帯の保育に比べどのように子どもの愛着対象の形成や心理的拠点形成に影響を与えているかを、職員からの多声的エスノグラフィーによって、浮き彫りにし、保育環境のあり方について見直しをするアクションリサーチにつなげている。現場の具体的な観察データと職員の直接的な意見を重層的に分析する方法は、2010年度の保育所観察にも生かす予定である。
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