我が国は、短期間に急激な高齢化社会を迎えた。このような事態において、高齢者が安心して生活できるための施策を講じてはいるが、高齢化社会の理想的なモデルはいまだ見いだせず、サポートシステムは脆弱である。一方、高齢者が自立して生きるためには、高齢者自身にも自助努力が求められる。高齢者自身がどのような基盤を持つことが自立につながるかを明らかにすることを目的として、平成21年度はベースライン調査を行った。調査地域は徳島県上勝町。調査対象は、料理のツマものを葉っぱビジネスとして展開している「いろどり」農家を営んでいる高齢者とそうではない高齢者。調査方法は、面接による聞き取り調査。調査項目は、生活行動・意識調査・食事調査。さらに、身体計測、血圧、骨密度、非襲撃的手法によるヘモグロビン測定など。面接調査ができた人数は58名(いろどり農家の高齢者37名、いろどり農家ではない高齢者21名)。ベースラインでの調査を実施してわかったことは、上勝町の高齢者は概して元気で生き生きとしていた。特に、いろどり農家の高齢者は、1日のうちで作業に従事している時間は平均6.7±2.5(時間)であった。平均年齢が70.3±6.0歳であったことから推察すると、この年齢の人たちが日々これだけの時間を経済活動につながる仕事に従事していることが大きな要因の一つではないかと考えられる。面接調査では、高齢者一人ひとりに対応したため調査時間は長く必要ではあったが、精度の高い調査とするためにはこの方法がよいと思われた。平成21年度の実施内容は、平成22年度からの本調査における予備調査として意義があったと考える。
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