本研究の目的は、保育士が担う地域子育て支援拠点事業の業務を定量的に把握分析することにより、地域子育て支援における保育士の専門性を検討することにあり、地域子育て支援拠点事業専従保育士の業務に関する量的、質的調査、及びその分析を行う。2010年度は、2009年度に実施した質問紙調査の分析、及びヒアリング調査を実施した。 質問紙調査の結果、業務項目(5件法)では、「ひろば対応」、「子ども対応」の項目は平均値が4.0以上に及んでいたのに比して、「地域支援活動」では情報提供以外の項目の平均値は2.0以下に留まった。また、地域支援活動因子の得点が高い群は、住民のエンパワメント、特別なニーズを有する家庭への支援等にも高い意識をもつ傾向が捉えられた。ヒアリング調査では、全国の拠点事業を対象とした質問紙調査により把握された地域支援活動を積極的に展開する拠点(以下地域支援高群)を対象に、その具体的業務および実践事例を聴取し、地域を基盤とした子育て支援実践のあり方を探究した。調査対象は、質問紙調査(2009年実施)により把握された地域支援高群(436箇所)の中から、質問紙調査回答時にヒアリング調査への協力を了解し、連絡先の記載があった5か所従事者計5名であった。調査方法は半構造化面接を採用し、拠点事業に従事するまでの経験と従事してからの経過、拠点事業における具体的業務、拠点事業における地域支援活動の実践事例について聴取した。 2011年度は本研究の最終年度であり、地域子育て支援拠点事業専従保育士の業務に関する量的調査の再分析を行い、保育士による地域子育て支援業務の具体的内容、地域子育て支援拠点事業全業務における地域資源連携業務が占める割合等、地域支援業務の実態を確認する。また実践事例の分析から、地域支援業務を積極的に展開する従事者への影響要因、地域支援業務の成立要因について考察を行い、地域子育て支援拠点事業専従保育士の業務について総合的に考察を行う。
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