近年の小児の言語・社会性の発達の遅延化の一因として、映像メディアを用いたIT機器により親の子どもへの視線が奪われ親子の関わりが減少していることが予想される。本研究では、乳児期からの子どもと親のIT接触の実態、発達や親子関係への影響を把握してIT機器の適切な利用方法を提言することを目的として、無記名・自記式の質問紙調査を行い、4ヶ月健診対象児1847名について、追跡調査を1地区では11ヶ月時に298名、2地区で18ヶ月時に1018名の回答を得た(回収中)。 本年は18ヶ月時調査および下記の4ヶ月時と11ヶ月時調査の解析を行なった。 1.授乳中のTVや携帯使用は相関性があり、また、日常のそれぞれの使用習慣と関連していた。 2.4ヶ月時に母のTV視聴時間や近くのTVがついている時間が長い子どもの方が、首座り、腹這いにすると頭を上げる、知らない人が来ると表情が変わる、授乳時に目が合うなどの率が低い傾向が見られ、また、11ヶ月時には、意思を伝えるために指差したり声を出す率が低く、TVへの関心は高かった。 3.11ヶ月時に子ども自身の視聴時間が長い方がつかまり立ちや人見知りをする率が低い傾向があり、母の視聴時間や近くのTVがついている時間が長い子どもの方がほめられると同じ動作を繰り返す、痛い時に親に訴える、親に見せたい物をもって来るなどの行動が少ない傾向が示された。 本調査は11ヶ月時の調査例数が充分ではなく、18ヶ月時調査は現在回収中であるが、上記のように、4ヶ月時の母や家庭のメディア習慣は既に4ヶ月児の発達にも関連し、11ヶ月時の発達は11ヶ月時の子ども・親・家庭のメディア習慣とも4ヶ月時・授乳時のメディア習慣とも関連していることが示唆された。親のメディア習慣の影響はあまり注目されていないが、親や子どものメディア長時間接触は、子どもの運動や親子の会話の減少、親子の信頼関係の形成に影響する可能性があることを認識する必要がある。18ヶ月時調査結果は成果報告書に報告する。
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