研究概要 |
オムツ素材を考える上で重要な特性である,高分子ゲルの膨潤度を,溶液に含まれる溶質の種類,濃度などを広範に変化させて測定し,ゲルの膨潤特性を詳細に調べた.そして,ゲル中の水とゲルの網目構造に着目して考察を進めた.ポリビニルアルコールを放射線照射し橋かけして調製したゲルから適切なものをいくつか選択し,コンゴーレッド,ベンゾパープリン4B,アゾブルーの3種類の染料の水溶液における膨潤度と染料収着性を測定した.染料を用いるのは消臭性を持つ遷移金属をゲルに固定する可能性を検討するためとゲル母体の高分子と相互作用を持つ溶質に対するゲル膨潤の基礎的な知見を得るためである.まず,ゲルの膨潤速度であるが,コンゴーレッドの場合,5mMの場合,1mMとくらべて初期は膨潤度が低く,平衡膨潤に近づくと逆に高くなった.染料濃度が低いときは,ゲル内部より外部の方が可動イオンが多く存在していること,またコンゴーレッドが高分子と強い相互作用を持つため,ゲル母体高分子を橋かけしていることなどが考えられた.コンゴーレッド水溶液中のゲル膨潤度と染料収着量を無添加塩系と塩化ナトリウム添加系で調べた.塩を添加した場合,添加塩濃度にかかわらず,染料収着量は増加するが,膨潤度は必ずしも高くならず,高添加塩濃度では,逆に膨潤度は低くなった.塩を添加すると,ドナン塩排除性を弱めゲル内水相への染料分配を増加させ,染料収着量を増加させるが,ドナン塩排除性の低下は,染料収着量が増加することによりゲルを荷電させる効果を超えてゲルの膨潤度を低下させることがわかった.このように,ゲル素材,その素材に対して親和性を持つ物質,そして尿中に含まれる塩類は,静電的な相互作用を通して複雑に互いに関係していることがわかった.
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