研究概要 |
オムツ素材を考える上で重要な特性である,高分子ゲルの膨潤度を,溶液に含まれる溶質の種類,濃度などを広範に変化させて測定し,ゲルの膨潤特性を詳細に調べた.特に,ゲル構成高分子と溶質との相互作用とゲルの膨潤速度に着目して検討を行った.まず放射線照射架橋により調製したポリビニルアルコールゲル(PVA)とポリエチレンオキシド(PEO)ゲルに対してカルボン酸水溶液中の膨潤挙動を観察した.PVAゲルは用いたカルボン酸溶液中で酸濃度の増加にともなって膨潤した.膨潤度はグリコール酸<りんご酸<マロン酸,酒石酸,くえん酸<乳酸の順に大きくなった.PVAの水酸基にカルボン酸が相互作用し,ゲル中に元来存在していたPVA鎖同士の水素結合を切断したため膨潤したと考えられる.各種カルボン酸に浸せきしていたPVAゲルを蒸留水中にもどすと,膨潤度は浸せき前の状態まで回復した,一方,PEOゲルはカルボン酸溶液中で収縮傾向を示した.今回用いたカルボン酸のうちマロン酸で最も収縮し,膨潤度は濃度にともなって小さくなった.PEOはPVAと異なり,高分子鎖間に水素結合を形成していないため膨潤せず,また,PEOのエーテル酸素とヒドロキシ酸の水酸基の相互作用がPEO鎖をわずかに荷電させ膨潤度を正に誘引したと考えられる.また,PVAゲルをベンゾパープリン4B(BP)水溶液に浸せきして膨潤したゲルをNaCl水溶液に移行して膨潤度の時間変化を測定したところ,0.2mM NaClでは,蒸留水に浸せきしたものとほぼ同様であり,初期に急激な膨潤を示したのち収縮し,平衡状態で膨潤度が水中の約1.1倍となった.1.OmM NaClでは初期の膨潤を示さずに単調に収縮し,平衡状態で0.2mM NaClのゲルと同程度の膨潤度になった.これらの結果を,ゲル内外のイオン浸透圧差,ゲルの膨潤収縮にともなうゲル中でのBPの拡散性の変化,NaCl添加による外部溶液中でのBPの化学ポテンシャル低下などを考慮して考察した.
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