研究概要 |
本研究は,スコットランド地方に数多く存在する歴史的建造物の内,ヘレンズバラの保全地区内における歴史的建造物の現代生活への利用手法について考究するものである。平成21年度においては,ヘレンズバラにおける歴史的建造物の抽出を実施した。ヒストリック・スコットランドは,歴史的建造物の文化財指定を行っている行政組織である。保存対象の建造物は,A~Cの3段階のカテゴリー分類が行われ,カテゴリーA:国内または国際的なレベルにおいて,建築的,あるいは歴史的,あるいはひとつの時代様式をそのままの状態で保っている重要な建造物,カテゴリーB:地方的なレベルで重要,あるいはある程度の変更がなされているものの,ひとつの時代様式の事例となる建造物,カテゴリーC:カテゴリーA,Bには該当しないが,伝統的な建造物としての様式を残し,地域的なレベルで重要な建造物,となっている。次に,抽出を行った歴史的建造物のマッピングの作業を実施した。具体的には,抽出された建造物のリストとヘレンズバラの地図との照合を現地にて実施した。さらに,スコットランドにおける歴史的建造物の保存制度についての調査を実施した。英国は,他の国に比べ歴史的建造物の登録制度の歴史が長い地域であり,その変遷には様々な試行錯誤があり現在に至っている。英国は,イングランド,ウェールズ,スコットランド,北アイルランドの地域から成り,各地域は独自の歴史的・文化的特徴を呈しているだけでなく,他の地域と異なる行政・産業・教育組織が存在し,それぞれが独立したかたちで存在する。従って,歴史的建築物の登録制度についても,各地域の社会環境の中で独自の歴史を有する。そこで,未だ学術的成果が報告されていないスコットランドにおける建造物の保存活用制度について明らかにした。なお平成21年度の成果の一部は,学術論文(査読有)として,公表した。
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