研究概要 |
本研究は,建造物の保存活用の観点から,歴史的価値の保存・維持管理とともに現代生活における活用という性格の異なる要素の調和的な手法のあり方について着目し検討することを目的としている。本研究では,調査対象地域を英国のスコットランドの都市ヘレンズバラとし,保全地区内における歴史的建造物の現代生活への利用手法について考究するものである。 研究最終年度となる平成23年度においては,研究の総括としてこれまでの研究データを取りまとめ成果報告書の作成を行うとともに,スコットランドにおける歴史的建造物の保存制度に関する考察,歴史的建造物の分布マップとデータベースの作成,歴史的建造物の現代の住生活における活用手法に関する実態調査,有効な歴史的建造物の保存活用手法の検討を実施した。 具体的には,スコットランドにおける歴史的建造物の保存制度に関する考察では,2011年12月に発表されたSHEP (SCOTTISH HISTORIC ENVIRONMENT POLICY December 2011)における歴史的建造物の保存活用制度の位置づけについて収集を行った資料をもとに考察を行った。歴史的建造物の分布マップとデータベースの作成では,保存地区内におけるすべての建造物の現状を踏査し,リスティングとともに地図上にそれらの分布をマッピングした。歴史的建造物の現代の住生活における活用手法に関する実態調査では,作成された分布マップと対応させながら,個々の建造物についてオリジナルの用途と実態についてのデータシートの作成を行った。有効な歴史的建造物の保存活用手法の検討については,前述の保存地区内における歴史的建造物の実態より得られた知見とともに,保存地区に隣接する商業・観光地域における歴史的建造物についての調査を通して,歴史的建造物の保存活用手法の分類と今後の課題について考察を行った。
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