本研究は、健康維持や快適性に関わる基本的な衣服として肌着に着目し、環境に配慮した健康で持続可能な衣生活のための素材性能の明確化を目標とする。衣生活の段階として、(1)健康で快適に着る、(2)品質の良い衣服を永く着続ける、(3)資源として使い切ることの三段階を設定し、素材設計の段階から持続可能な衣生活を配慮した素材の性能設計システムの確立を目指す。 (1)健康で快適に着る:市場に提供されている繊維組成や布構造等の系統的に異なる紳士夏用肌着試料を収集し、布の力学特性・表面特性、通気特性などをKES-FB計測システムにより測定した。機能性繊維やメッシュ編布の適用により、肌着素材の特性は既存の報告より広範囲に及んでおり、性能別にグループ化が可能である。(2)永く着続ける:収集した肌着試料について20日間の繰り返し洗濯試験を行い、比較的短期間の繰り返し洗濯による肌着の性能変化を評価した。肌着の丈方向の寸法や布の基本力学特性は3回~5回までの比較的短期間の洗濯により大きく変化した。天然繊維系で編構造が粗なものは性能変化が大きい傾向が示された。また、乾燥工程の影響については、洗濯乾燥機を用いた場合は自然乾燥より寸法変化が顕著で収縮しやすいが、布は嵩高く肌触りがソフトになると評価され、使用状況に応じて取扱い方法を提案することの必要性が示された。(3)資源として使い切る:生活文化として継承されている伝統的有効利用の方法に関する文献調査を行い、肌着を用いた有効利用の方法を検討した。
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