本研究は、健康維持や快適性に関わる基本的な衣服として肌着に着目し、環境に配慮した健康で持続可能な衣生活のための素材性能の明確化を目標とする。衣生活の段階として、(1)健康で快適に着る、(2)品質の良い衣服を永く着続ける、(3)資源として使い切ることの三段階を設定し、素材設計の段階から持続可能な衣生活を配慮した素材の性能設計システムの確立を目指す。 (1)健康で快適に着る:滋賀県高島市の伝統織物である綿クレープ肌着に着目し、布の力学特性・表面特性、通気特性をKES-FB計測システムにより測定した。高島クレープはたて糸方向の曲げ特性が大きく、よこ糸方向に伸びやすい性質を持っており、肌着と皮膚の間に空間を作り易く、夏季に涼しい着心地が得られることを明確にした。(2)永く着続ける:高島クレープ肌着について、4シーズン約1200時間着用後の古着試料を収集した。着用前の布の特性値と比較することにより、繰り返し着用による布の性能変化を評価した。クレープ肌着は洗濯によりよこ方向の寸法収縮が大きいが、着用により収縮が回復していた。布の力学特性の変化から、基本風合い値SOFUTOSAが増加することが捉えられ、着用によりソフトさが増すことを定量的に評価することができた。(3)資源として使い切る:リユースしやすい衣服として子ども服を取り上げ、幼稚園・保育園に通う子どもを持つ母親の、子ども服のリユースに関する意識と行動を調査した。衣服のリユースに関する関心は高く、衣服の交換が有効な方法であることが示された。また、生活文化として継承されている「裂き織」について、中学生を対象とした授業実践を行い、肌着素材を用いた有効利用の方法を検討した。
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