本研究は、高齢化(限界集落)・過疎化の著しい長崎市の離島Aについて、高齢者の生活実態を把握し、そこによりよい高齢期の生活のための「生活支援ネットワーク」形成のためには、何が提言できるかという実践的な目的をもって着手した。 調査対象地の離島は、長崎市のA島(高島)である。比較研究のために同じ長崎市の離島で炭鉱閉山の島であるB島(伊王島、2011年3月27日架橋により離島から外れた。)、C島(池島)も並行して現地調査を実施している。2007年3月のA島の現地事前調査を皮切りに年2回程度宿泊しての現地調査を実施している。A島をはじめとして島内の行政センター、派出所、診療所、高齢者施設、また小学校、中学校などにおける訪問聞き取り調査を行っている。また、各島の高齢者への個人あるいはグループ面接調査を重ねている。本年度も同様に現地調査を実施した。 本年度は、事前調査をすませていたC島について、2度目の現地調査が2回も悪天候のために渡航できなかった(欠航)ところを実現でき、島の行政センター支所や居住者への面談ができたことが前進である。また、先行研究のある五島市の久賀島にも行ってみた。 その結果、A島の生活実態がより理解できたように考える。現時点では、A島の高齢者生活がA島においてよりよく「持続可能」であるためには、三菱砿業所、町制、市への合併という歴史的経緯を踏まえると、後退した行政センターの機能の再検討が鍵ではないかという結論を得ている。したがって、平成23年度には、市役所でのヒアリングを実施したいと計画している。研究結果については、家政学会だけでなく、福祉文化学会や人口学会において発表することにより今後の分析・まとめについて有用な示唆を得ることができた。
|