本調査研究の対象地は、高齢化率が50%を超える限界集落であり、人口減が著しい過疎地でもある離島である。 今後の高齢者の生活文化を創造していくうえで、有用な示唆に富む高齢者の生活実態が「ある」と考える。そこで、高齢者の生活実態を構造的に把握し、そこに生活問題・課題はないか、そして問題・課題がある場合には有効な解決策を提言したいという実践的な研究目的から着手した。 2007年3月の現地・事前調査から始めた。研究対象地の第一は、長崎市に2001年に合併したA島であるが、比較研究のために長崎市に合併されたB島、C島も調査対象地に加えてきた。炭鉱閉山の離島であり、高齢化・過疎化の著しい長崎市の3つの島について、高齢者の生活実態を「歴史・地理・交通」「人口・家族・隣人」「消費・住居・余暇」「福祉・医療・行政」の4方面から把握することに努めてきた。 これまでの分析・考察は、A島を中心にすすめてきた。A島の高齢者が「人生の集大成期における生活主体として最大限に活動する」ために、社会と調和・共生する「配慮」「協働」「ケア」の視点から方策を探っている。現時点では、行政が地域の人間関係形成を援助すべきであるということを強調したいと考えている。A島は、市への合併により、市レベルでの行政サービスが展開されているが、住民は島のことを熟知した職員を期待している。職員には、高齢者の心の機微までを理解し、島内の新たな人間関係形成に積極的役割を果たすことが求められる。炭鉱閉山の島には、今なお職階制の影が島の高齢者間のネットワーク形成を阻んでいる。しかし、A島の高齢者には自らも他者の生活に配慮して、共に互いの生活を支え合うために働きたいという欲求はあると理解している。 B島が2011年3月に陸地との架橋が完成・開通し、離島振興法の対象から除かれることになった。島の生活にも影響を及ぼし始めている。この経緯を注視したいと考えている。
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