研究概要 |
小・中学生を対象とする実験の予備調査として,大学生20名(男性10名,女性10名)を対象にして,机・椅子の号数変化による着座時の学習者の脳波測定によるストレス反応と意識の変化を測定した。被実験者の身長から割り出した適正な机・椅子の高さ(適と略す)を基準とし,その高さから1号だけ高い高さ(高と略す)と,1号だけ低い高さ(低と略す)のスチールパイプ製の机・椅子を使用し,この3段階で無作為に高さの順序を変えて験者を行った。被験者には,電極配置法によって定められている両後頭部(2カ所)と左耳朶(1カ所)に電極を取り付け,簡易型脳波測定器を使用して1秒毎に3.0~30.0Hzの周波数帯域の脳波を測定した。文字を書くという5分間の着座作業と安静にしている5分間の着座状態を3段階の高さ毎に被験者に行ってもらい,この後の10分間の休憩時間内に,使用した机・椅子についてアンケートによる意識調査を行った。 机・椅子の高さの違いによって学習者に影響が出てくるかを検証するために,一元配置の反復測定による分散分析を行った。その結果,リラックスしている状態を示すα波(7~13Hz)では,書き取り時に机・椅子の高さの違いによる有意差が危険率10%でみられ,特に高でα波が多いことがねかった。一方,安静状態ではα波の有意差はみられなかった。また,緊張している状態を示すβ波(17~23Hz)では,書き取り時と安静時の両方で,高さの違いによる有意差が危険率10%でみられ,特に高でβ波が多いことがわかった。 また,アンケートによる意識調査の結果から,机・椅子それぞれの高さの感じ方は,机・椅子ともに適と高はちょうど良いという意識に対し,低は低いと意識されている結果が出た。主観的疲労度ついても,高の机・椅子が最も疲労度が低く,低の時に疲労度が高く,特に臀部と肩の部位で高いことがわかった。
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