藍の染料であるインジゴイド染料で染色した染色物の色彩は、染色条件で異るし、放置によって変化する。これは、インジゴ分子の会合状態の違いによると推測される。そこで、多様な青の色あいを染めることを目的として、様々な染色・放置の条件により、色彩がどう変化するのかを詳細に検討した。色は、目視および分光反射率曲線により比較した。 まず、合成インジゴを、アルカリ下、ハイドロサルフィトナトリウムにより還元して染色する一般的な建て染めの方法により、綿布および絹布を染色した。その際、インジゴ量は、染色布の色彩変化が判定しやすい濃さに染まるような量とし、水酸化ナトリウムの量、ハイドロサルファイトナトリウムの量、染色時間、染色温度を変えて染色条件の比較をした。また、染色後、染色布の加熱や加湿を行い、色彩変化が起きないかを調べた。その結果、綿布も絹布も高温で染色すると薄くくすんだ色になり、低温で染色すると薄いが、より彩度の高い色になることがわかった。染色時間については、長くなるほど彩度が増す傾向が見られたが、30分染色すると最大に達した。染色後の加熱に対しては綿布も絹布も変化はないが、加熱と加湿を同時に行うとくすんだ色になった。次に、藍植物に含まれるインジゴの前駆体であるインジカンから絹布を染色した(いわゆる「生葉染め」の染色法)。その結果、低温で染色した方が、彩度の高い色が得られた。一旦乾燥させた染色布を、水やアルコールに浸漬することによる色彩変化を調べたところ、水やメタノールで色彩変化が起こり、温度が高いほど速く進行したが、エタノールやプロパノールでは起こらなかった。
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