研究概要 |
超音波は軟質表面に吸収されやすいことから,硬質表面の洗浄に向いているとされている.しかしながら,超音波洗浄では大量の洗浄液を必要としないことから,節水が可能で環境負荷を低減できるという利用メリットは大きい.そこで本申請では,洗浄のための機械力として超音波を利用した新たな衣服洗浄システム開発のための基礎的情報を得るためことを目的として研究を行う.本年度は初年度に引き続き,超音波を用いた固体粒子汚れの洗浄現象を明らかにするため,画像二値化処理機能を利用した洗浄性評価システムを用いてモデル洗浄系による洗浄実験を行った.モデル洗浄基質にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよび布(スパン織物),またモデル固体粒子汚れにはサブミクロン大のカーボンブラック粒子と新たに酸化鉄粒子,油汚れのモデルには着色オレイン酸およびステアリン酸を用いた.洗浄液には,超純水およびアルカリ水溶液,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を使用した.洗浄液の液性を調べるため,pHおよび溶存酸素濃度の測定をした.その結果,超音波強度の指標である音圧5mV以上では,通常の撹拌洗浄に較べて大きな洗浄率が得られ,洗浄平衡に達する時間は5分程度と短時間で洗浄できることがわかった.基質に付着している粒子は,ほとんどが二次粒子として付着しており,粒子径の違いによる洗浄率には大きな差異は認められなかった.また,アルカリ剤添加系では,いずれの汚れも洗浄率が増大し,油汚れは100%近く除去された.界面活性剤添加系では,乳化やローリングアップによる油汚れの除去が促進されるが,固体粒子汚れの洗浄率は著しく減少した.これは,洗浄液の物性(表面張力,粘度など)の変化がキャビテーション強度の低下に影響したものと考えられる.つぎに、カーボンブラックを付着させた人工汚染布および湿式人工汚染布を超音波洗浄したところ,5分程度で洗浄平衡に達し,超音波出力を上げると洗浄効果は高くなった.布からのカーボンブラックの粒子除去には界面活性剤の添加効果はわずかであった.以上の結果から,超音波が汚れ除去に有効な機械力となり得る洗浄条件があることがわかった.今後は,超音波の周波数を変えるなど,布帛洗浄への超音波利用に向けてさらに検討していく予定である.
|