研究概要 |
本研究は、肢体不自由児の成育および子育てにおける居住環境の課題を明らかにし、肢体不自由児の住環境整備の手法や介入時期を検討することを目的としている。今年度は、アンケート調査(有効回収数1,120通)の分析、肢体不自由児を介助しやすい浴室スペースに関する実験、啓発用パンフレットの作成を行った。 (1)アンケート調査の分析:肢体不自由児の身長・体重・疾病・身体機能・医療的ケアの有無などの変数をまとめて総合的指標を作成し、これを用いて6歳から18歳までの肢体不自由児を4つのタイプに分類して、タイプごとの在宅における入浴介助の方法と負担感の特徴を明らかし、タイプごとの介入のあり方を考察した。 (2)肢体不自由児を介助しやすい浴室スペースに関する実験:在宅における身体的負担の少ない入浴介助方法や環境の提案を行うための資料とするために、ダミー人形と洗体用いすを用いた介助動作のシミュレーションを行い必要な介助スペースを検証することを目的とした。研究方法は、一般的に普及している浴室の大きさを4パターン設定し、肢体不自由児を想定したダミー人形を6名の被験者(医療専門職)によって入浴介助を疑似的に実施してもらい、その様子の動作観察および官能評価をおこなった。実験の結果、洗体用いすを用いた場合の介助しやすい浴室の大きさは1坪以上(1616,1418,1620サイズ)であることが明らかとなった。 (3)啓発用パンフレットの作成:これまでの研究成果の還元の意味も含めて、安全で適切な入浴介助の方法や住環境整備のあり方を啓発するために、パンフレットを作成した。パンフレットの構成は、子どもの身体機能や体格に関わらず共通してみられる「抱きかかえ介助」の問題をとりあげ、具体的な対応方法を示した。パンフレットは7,000部印刷し、特別支援学校44校を通して在籍児童生徒の家庭に配布を依頼した。
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