研究課題
適切な加熱は、食品の美味しさを引き出すとともに、微生物による危害を軽減させる上で必要不可欠である。しかしながら、熱的操作が適切でないと、食品は過度に変性し、本来有する栄養成分を減少させるだけでなく、ヒトにとって危害となる成分を生じる。近年、高温で調理した畜肉、魚肉から、危害物質としてヘテロサイクリックアミン類が同定、定量され、注目されている。以上の背景から、加熱による新たな危害物質の生成を抑制しつつ、食材にとって最も適切な加熱を行う上で、伝熱現象に基づいて食品に生じる反応を予測することは重要である。本研究では、畜肉、魚肉を対象として、内部および熱媒体と接する表面とに分け、内部の品質を良好に保つように制御しつつ、伝熱が先行する食品表面の状態を予測することを目指した。畜肉、魚肉は、加熱によって主成分のタンパク質が変性し、品質(テクスチャーや水の状態)へ影響を及ぼす。まず、熱分析法により、主要筋肉タンパク質のミオシン、アクチンの熱変性による吸熱ピークを観測し、ダイナミック法を用いて反応速度定数の温度依存性を決定した。これによって、加熱途上の食材内部のタンパク質の変性分布を予測することが可能になった。予測に基づき、変性度の明確な試料を調整して、硬さの指標として弾性率を、水の状態を磁気共鳴画像法によって解析し、変性程度と、品質との関係を明らかにした。一方、食品表面の状態変化は、焼成によって生じる焦げ色の変化を色彩計で計測し、過加熱を含む調理進行の指標となることを示した。さらに、赤外線加熱と共に、異なる熱媒体(過熱水蒸気、乾燥空気、窒素)を用いた高温焼成実験を行い、焦げ色の変化に及ぼす加熱方法や熱媒体の違いを調べた。その結果、加熱方法が異なる場合でも伝熱計算に基づき、呈色変化を予測することができた。また、焼成環境中の酸素が呈色速度に影響することを、定量的に示すことができた。
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Submitted to J.Food Eng.,(2012)
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