従来から日本人の食生活を支えてきた米の消費量は年々減じ、大量の小麦粉を輸入してつくられるパン・麺類の消費量が増加して久しい。日本の風土に適した米を用いて、最新の製粉技術により得られる微粒分米粉に機能性を与えることで、小麦粉が調理領域で果たしてきた役割を果たせるよう、種々の調理について検討することとした。 まず本年度は、米粉を用いてグルテンフリーの米粉パンを調整するための基礎的実験を行った。小麦粉に比べ、米粉は吸水率が高いので、パン生地を調整するときの最適加水量をモデル膨化実験法で比較検討した。その結果、最適加水量には米の品種、貯蔵期間が影響することが示された。そこで、最適加水量で米粉パンを調製した。従来からのパン製造には、小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂類そして水が必要とされる。この主材料である小麦粉を米粉とした場合、スポンジ状網目構造の保持に有用と考えられる副材料に何をどの位の割合で加えるかについて検討した。スポンジ状網目構造の保持効力を食物繊維、たんぱく質、増粘多糖類の3種類について予測し、実際には乾燥ごぼう粉末、大麦粉、β-グルカン、絹フィプロイン、キサンタンガムを用いて生地量60gを1個のパンに仕上げる条件で、添加適性量を模索した。この過程を進める中で、用いる米粉の一部を糊化し、生の米粉に加えることの有効性を見いだした。そこで、米粉の一部を糊化させる割合の添加量についても比較した。その結果、糊化でんぷん濃度は25%前後、糊化でんぷんの添加量は生地の20~30%が適当とみなされた。各々のスポンジ状網目構造保持剤については、最適添加量を焼成後の比体積値、硬さ応力、付着性などの物性結果から検討している。今後、糊化でんぷんを併用することで、性状がより有効に改善され、パン型での食パン調製条件に至るまでを明らかにしていく。
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