従来から日本人の食生活を支えてきた米の消費量は年々減少し、大量の小麦粉を輸入して作られるパン・麺類の消費量が増加して久しい。そこで、日本の風土に適した米の消費量を維持し食糧自給率を高値に保持するためにも、米を用いた新しい食品の開発が望まれるところである。最新の米の製粉技術により今までは不可能だった微粒粉米粉の調整が可能となった。これらの情勢を考慮し、米粉に機能性をもたせ、小麦粉が調理の分野で果たしてきた役割を種々の調理について検討し、商品化にむけたいと考えている。平成21年度は、グルテンフリー米粉パンを調製するための基礎的条件設定を行った。パン製造には、小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂及び水が必要である。このうちの主材料である小麦粉を米粉に代替することに伴う、加水量、形状保持剤、加熱条件等を米粉に適合させる調整条件を検討した。米粉では、生地調製に小麦粉より多くの水を必要とすること、また、小麦粉の場合形成されるグルテンと同様なスポンジ状網目構造の働きをする形状保持剤として、絹フィブロイン、ゾル状キサンタンガム(増粘多糖類)の添加が有効であった。この検討段階において、使用する米粉の一部を加水量の一部を用いて加熱糊化させ、糊として生地に加えることの有効性を見い出した。本年度は、さらに小麦粉に水を加えてドウを作るとき、一定時間の"ねかし"で、グルテンの網目構造が形成されるが、米粉の場合にも、一定時間"ねかす"ことで米粉でんぷんの中心部まで水が浸透し、水和性が良好になることを見いだし応用を試みた。イーストとそれに必要な砂糖、水、以外の材料を混ねつ後、一晩そのままねかした。その後、膨化基材を加え、米粉パン生地を調製し、焼成した。製品の評価は、比容積、テクスチャー測定による物性値と官能評価で行った。その結果、添加する形状保持剤の種類によって、"ねかす"効果は一様ではなかった。米粉のみ、ごぼう粉末、絹フィブロイン添加の場合にねかし効果が認められた。また、米粉糊添加と併せて、食物繊維、絹フィブロイン、増粘多糖類の併用添加について検討した。その結果、絹フィブロインでは、製品の物性面、官能評価いずれに於いても好ましい結果が得られた。今回行った生地の発酵段階の気泡の経時的顕微鏡観察方法は、パン調製時のスポンジ状構造形性を予測する有効な手法であることも確認された。
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