従来から日本人の食生活を支えてきた米の消費量は激減し、大量の輸入小麦粉からのパンや麺類の消費量が増加して久しい。日本の風土に適した米の消費量を維持し食糧自給率を欧米先進国と同程度に保持しようと、米を用いた新たな食品開発に向け、米粉市場は画期的な展開を繰り広げている。そこで、本研究では、幅広く利用されてきた小麦粉の調理を米粉で調製するための諸条件について検討することとした。 まず、主食として大量に消費されるパンを対象とし米粉100%で調製する条件を検討した。パンは生地にスポンジ状網目構造が形成され、イーストから生じるCO2を細かな気泡として保持することで製品が形作られる。主材料を米粉に代えたときの調製条件を検討した結果、小麦粉に比べより多くの加水量で調製すること、形状保持剤として食用絹フィブロイン、ゾル状キサンタンガムの添加が有効であった。さらに米粉の一部、すなわち米粉の20~30%量を25%濃度の米粉糊で代替することで、軟らかくしっとり感と腰のあるパンに仕上がることが示された。また、米粉を加水後一定時間(24時間)"ねかし"、製パン操作を施した結果、米粉でんぷんの水和状態が良好となり、軟らかな特長あるパンが調製された。米粉パンを調製する前段階で、加える形成保持剤の有効性を判定する方法として、発酵段階の生地の気泡の形状を経時的に顕微鏡観察することで、スポンジ状構造形成の予測が可能となることが明らかとなった。最後に、製品調製中にグルテン形成が重要視されない小麦粉製菓のなかで、シュー皮とカスタードクリームに米粉利用を試みた。カスタードクリームについては、小麦粉に対応する使用量より高めの濃度で調製することで何ら遜色のない性状であった。調製方法では、HI(電磁調理器)を用いる撹拌加熱に比べ、電子レンジを用い途中で撹拌操作を施す二段階加熱方法が短時間加熱で調製出来、合理的であった。シュー皮については材料配合から、種々の条件について今後の課題としていく。
|