研究概要 |
フードテクスチャー刺激による脳機能回路の賦活を解析し、脳の機能ネットワークの違いによるフードテクスチャー評価を神経科学的にアプローチすることが本研究の目指すところである。 マウスにおける、異なる食感の飼料の摂取をテクスチャー刺激とし、それによる脳神経細胞の賦活部位を検出する手法を検討した。 まず、飼料すなわちテクスチャー・サンプルを確立した。3種類とし、それぞれ破断性食(C食)、粉体食(P食)、ゲル食(G食)とした。 賦活部位の検出には脳神経細胞の成長・成熟の促進に関わる物質の量を指標とした。具体的には、脳各部位における脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor, BDNF)、神経成長因子(Nerve groWth factor:NGF)の定量をELISA法により行うことを検討した。BDNFは脳の虚血耐性を高め、シナプス形成による記憶力を増強すると言われている。また、うつ症状の緩和や、糖代謝・脂質代謝を改善するなど好ましい効果が期待されている因子である。 小脳、中脳、間脳、海馬における、短期間テクスチャー刺激の影響を確認した。その結果、G食群が他群に比べ両因子とも少ない傾向があり、テクスチャー刺激の相違によって影響が異なることが判明した。また、NGFについては、部位による違いも認められ、海馬が他の部位に比べ多かった。また、P食群、C食群においては海馬、間脳、小脳、中脳と多く、G食群と比較して有意差が認められた。以上のことから、本手法により賦活部位の検出ができると考えた。さらにテクスチャー刺激が脳機能に与える影響を考察することも可能と考えた。 しかしながら、G食群は体重の減少など成長不良の可能性が考えられた。今後その補正の手法について検討する必要がある。
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