研究概要 |
葉酸は、神経管閉鎖障害のリスクを低減すると報告されているため普段の食事から十分に摂取する必要があるが、熱や光に弱く不安定であるため調理の際に失われやすい。昨年および一昨年の研究の結果より、葉酸卵はほうれん草と比較し葉酸の加熱安定性が高く、希釈しても保持されていること、また、葉酸卵とほうれん草を混合し炒めると、葉酸卵とほうれん草の葉酸を保持する可能性が考えられた。そこで本研究ではまず、葉酸の加熱安定性と卵白との関係を明らかにするため、卵白のモデルを調製し、卵黄に含まれている量と同じ量の葉酸を添加して加熱を行った。また、加熱安定性に関わる成分として、葉酸結合性タンパク質の存在が示唆されていることから、卵黄をゲルろ過し、加熱安定性に関わるタンパク質の分離を試みた。 卵白のモデルはオボアルブミンを用いて調製し、1:0~1:4まで希釈後、葉酸を添加した。卵黄中のタンパク質は硫安沈殿後ゲルろ過を行い、タンパク質画分を分取した。試料中の葉酸含有量はVitaFast葉酸キットで測定した。その結果、葉酸含有量は希釈卵液1:0と比較して1:1では保持されたが、1:2, 1:3, 1:4では有意に減少した。卵とほうれん草を同時に炒め調理をすると葉酸は保持され、昨年と同様の結果が得られた。卵白モデルに葉酸を添加して蒸し調理をしたところ、どの希釈倍率でも葉酸は保持されていた。ゲル濾過によって卵黄中のタンパク質の分離を試みた結果、SephadexG-50およびSephadexG-100 においてvoid volumeより前でピークが認められたことから分離はできていなかったが、ピークに葉酸が検出されたことから、このピークに存在するタンパク質と葉酸が結合している可能性が考えられた。
|