研究概要 |
肥満はわが国で大きな社会問題となっている。そのため,食べても糖質の消化吸収が遅く血糖値の上昇が緩やかで肥満になりにくい食品の開発を目的として,物性,構造,澱粉の消化性との関係についての研究をおこなっている。平成22年度は,非澱粉系多糖類であるコンニャクグルコマンナンが澱粉の物性,構造,消化性に与える影響を検討した。澱粉は最もよく研究されているとうもろこし澱粉を用いて,以下の2点について研究をおこなった。1)5.5%の澱粉分散液に分子量が異なる4種類のグルコマンナンを0.5%加えて,90℃,30分の加熱で糊化させた後に澱粉の消化性を調べた。その結果,添加したグルコマンナンの分子量が大きいほど澱粉の消化性が抑制された。また,力学物性値である貯蔵剛性率G'の値が高いほど澱粉の消化性は抑制される可能性が考えられた。2)糊化させる加熱温度の影響について,力学物性と構造の面から検討した。実験は,5.5%の澱粉分散液に分子量が最も大きいグルコマンナン(以下,PA)を0.5%加えた場合と加えない場合でおこなった。PAを添加した澱粉分散液では,90℃で糊化させると高いG'値を示したが,加熱温度を上げるに従ってG'値は低下し,98℃の加熱で無添加の澱粉と同等な値まで低下した。共焦点レーザー走査顕微鏡によりミクロ構造を調べたところ,加熱温度の増加に伴い,澱粉粒の消失が観察された。今後,さらにG'値と澱粉の消化性との関係を検討する予定である。
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