本研究の目的は、食生活の乱れと安全性が社会問題になっている中、脂肪酸特にアラキドン酸とトランス脂肪酸が、炎症に及ぼす影響を、基礎的にまた臨床的に検討するものである。そしてそういう炎症惹起性の脂肪酸のリストを作り、魚油であるDHAとEPAにて、もっとも有効に減少させることができるということを、細胞レベルとヒトレベルで実証し、栄養保健と予防医学にひとつの筋道をつけることである。研究実施計画として:短期の実験(a)蛍光プローブDCFH-DAを使用した細胞内のフリーラジカル(ROS)の測定。(b)蛍光プローブFura-2を使用した細胞内カルシウムイオン濃度の測定(c)ベータヘキソサミニダーゼをモノターした細胞内からの炎症性メディエーターの遊離の測定を重点的に施行した。 アラキドン酸は、イヌの培養細胞であるCM-MC細胞(canine cutaneous mastcytoma-derived cells)と肥満細胞のモデル細胞系であるラット好塩基球性白血病細胞において、炎症を誘起するが、EPAおよびDHAを添加するとアラキドン酸による炎症促進作用を抑えた。代表的なトランス脂肪酸であるエライジン酸は、CM-MC細胞およびRBL2H3細胞において、一昼夜処理をすることによりSubstancePによる細胞内カルシウム濃度上昇や脱顆粒を亢進させた。これらは細胞膜中のリン脂質を構成する脂肪酸に入れ替わりことにより、細胞内の炎症性シグナル伝達が制御されると示唆されるが、受容体の関与など他の可能性も検討している。また栄養健康調査票を作成し本学学生に対して実施を行い、食生活におよぼす生活の質およびヒトサンプルからのHPLCによるヒスタミン測定を検討しているところである。
|