平成21、22年度の成果より、食事導入期の大豆タンパク質(SPI)摂取が酪酸生成を促進する腸内細菌叢の定着に強く寄与し、その定着がのちに他のタンパク質を摂取しても安定していることを明らかにした。一方、腸内細菌叢のパタンの違いで肥満発症に影響を与えることが報告されており、食事導入期に供給する窒素を変えることで健全な腸内細菌叢を構築できると考えた。そこで肥満モデル動物として遺伝的肥満マウス(ob/ob)を用い、食事導入期のSPI投与による特定腸内細菌叢の定着が肥満発症に与える影響を調べた。肥満マウスのヘテロマウス(C57BL/6J ob/-)の交配により得られた仔ラット(C57BL/6J ob/-およびC57BL/6J ob/ob)を21日齢で強制離乳し、カゼイン(Cas)およびSPIを窒素源として与え、定着した腸内細菌叢の違いを16S rRNA遺伝子のPCR-DGGE法、クローンライブラリ法で調べた。また、脂肪細胞サイズを調べ、肥満発症に与える影響を検討した。この結果、食事導入7日後以降、いずれの遺伝子型でもSPI食群でCas食群と比べ有意に体重は低値を示した。SPI食群の腸内細菌叢はCas食群と有意に異なるパタンを示した。また、ヘテロマウスと肥満マウスの間でも有意な腸内細菌叢パタンの違いが認められた。腎周囲脂肪組織の脂肪サイズはSPI食群でCas食群より有意に小さかった。これらのことから、窒素源として食事導入期にSPIを与えると、正常動物のみならず、肥満動物でも大腸内の腸内細菌叢の定着に影響を与えられることが判明した。SPI食群で脂肪蓄積の減少も認められたが、腸内細菌叢の変動との関係についてはさらなる検証が必要である。
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