固形腫瘍の増大には栄養成分や酸素の供給が必要であり、そのために腫瘍は局所的な血管網の伸長(血管新生)を誘導することが近年明らかにされている。この血管新生を制御して癌を抑制・退縮させる治療法の開発が進められ、その成果として抗VEGF抗体Avastin(bevacizumab)が進行性大腸癌患都約5ヶ月の延命効果を持つことが示された。この薬剤は血管新生阻害薬として初めての医薬品認可を2004年に米国で受け、2007年4月に日本においても「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の治療薬として承認されている。このように、腫瘍血管新生の阻害は既に臨床レベルで有効性が証明されている癌治療の新戦略であり、これを応用して癌の予防・再発防止に利用できる食品の開発を目指すことが本課題の全体構想である。 平成22年度は、これまでの成果を基に様々な植物抽出物や食品成分について新たにスクリーニングを行い、血管新生抑制活性を有するサンプルを選出して活性成分を同定した。同定された活性成分について、その血管新生抑制の分子機構の解明を行った。 その結果、プロポリスの構成成分として複数の化合物を新たに同定し、これら化合物が血管新生抑制活性を有することを示すことができた。また、柑橘類に多く含まれるポリメトキシフラボノイドであるノビレチンが、強い血管新生抑制作用を有することを明らかにした。さらに、分子レベルで、ノビレチンによってシグナル伝達タンパク質ERK1/2やJNKが不活性化され、caspase経路が活性化されることも示した。
|