炎症性右鬱血心不全(CHF)に対するレゾルビンD1(RvD1)の病態予防効果を明らかにするために、これまでRvD1 0.1μg/dayまたは1.0μg/dayをCHF誘発直後から1週間ラットに腹腔内投与を行い効果を見た。今回は長期間RvD1投与について検討するため、RvD1 0.1μg/dayをCHF誘発の9日前から解剖前日までの30日間腹腔内投与した。動物群は、対照群(健常ラット+生理食塩水投与)、Rv群(健常ラット+RvD1投与)、CHF群(CHFラット+生理食塩水投与)、CHF+Rv群(CHFラット+RD1v投与)とした。心電図波間に各群の差は見られなかった。CHFは通常3週間前後で死亡するが、今回の3週間後のCHF群の生存率は75%であった。これに対し、Rv投与したCHF+Rv群では生存率100%で、Rv投与によりCHF死の抑制効果が見られた。 またドコサヘキサエン酸(DHA)を経口投与したラットではDHAからRvD1への変換によりRvD1が増加することを予想し、DHA経口投与したラット心臓中のRvD1のガスクロマトグラフ質量分析計による定量を試みた。しかしRvD1は非常に微量で、本学のガスクロマトグラフ質量分析計による定量は難しかった。そのため、DHAからRvD1への変換による病態予防効果の検討は行わず、DHA28日間経口投与による心臓機能への影響を検討した。その結果、DHA経口投与した健常ラットでは心電図QT間隔が短くなった。CHFではQT間隔が延長したが、CHFにDHAを経口投与すると、QT間隔の延長は抑制された。しかし、3週間後のCHFの生存率はDHA投与により改善せず、Rv投与した場合とは異なる結果であった。従って心臓においては、DHAはRvD1に変換され効果を発揮する以外に、DHA自体のCHF抑制効果を持つと推測した。
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