C57BL/6マウスを高リン(1.5% Pi)食で飼育すると、3週間程度で、後肢膝関節軟骨の石灰化を認め、さらに骨密度の低下を認めている。この実験系を利用し、経口摂取させたプロリルヒドロキシプロリンなどのコラーゲンペプチド由来のペプチドの骨密度減少抑制効果および後肢膝関節の石灰化抑制効果を組織レベルで検討した。その結果、プロリルヒドロキシプロリンなどのコラーゲンペプチド由来のペプチドが骨代謝や軟骨代謝に関与することを見いだした。特に、組織学的解析とCTによる解析から、それぞれの因子は、骨密度や骨質ならびに軟骨質を向上させることを見いだした。さらに、これらのコラーゲンペプチドがマウス骨髄由来培養破骨細胞の分化を直接制御すること、さらに培養骨芽細胞株MC3T3-E1細胞の増殖には影響を与えないものの、分化を促進することを見いだした。これらの分化に関与する遺伝子をin vivoの骨組織を用いたDNAマイクロアレイ解析やin vitroの培養細胞を用いたRT-PCR解析から、破骨細胞や骨芽細胞の分化を直接調整する遺伝子の発現量がコラーゲンジペプチドによって影響されていることを新たに見いだした。さらに、この破骨細胞をデンチン上で培養後、培養液を回収してLC-MSでコラーゲンペプチドを定量した結果、プロリルヒドロキシプロリンが顕著に、デンチンから溶出することを見いだした。 以上の結果、これまでエビデンスが明らかでなかった、コラーゲンの骨への作用が、プロリルヒドロキシプロリンを中心としたコラーゲンペプチドの骨の細胞への直接作用であることを明らかにできた。
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