本研究は、タンパク質の供給源として重要な食品に対して、従来とは異なる概念を導入して構築した新規な換算係数算定法(換算係数=アミノ酸組成に基づく正確なタンパク質量÷全窒素量)を適用し、食品中に含まれる窒素量から正確なタンパク質量を推定できる換算係数を算定すること、および得られた新規換算係数の有効な利用法について提案することを目的とした、3年間の基盤研究である。初年度(平成21年度)は、様々な食品に対して新規な換算係数算定法を適用することを目的とし、植物性タンパク質の供給源である豆類のアミノ酸組成分析結果および「アミノ酸組成表」収載の295食品に対して新規換算係数を算定した。昨年度(平成22年度)は、これまでに得た新規換算係数の利用法を探ることを目的に研究を行い、その実用性を確認した。 最終年度である平成23年度は、更なる適用範囲の拡大と実用性の向上を目指し、動物性タンパク質に対する新規な換算係数算定法の適用および新規換算係数の有効な利用方法の提案を目的として研究を行った。肉類については、牛肉・豚肉・鶏肉を試料として分析を実施した。得られたデータから算定した新規換算係数の平均値は5.34(n=18)であり、非タンパク態窒素含量が少ないとみなされてきた肉類についても、従来の換算係数である6.25と比較して、低値であった(日本食生活学会に投稿中)。なお、魚類については、実施計画通りに研究を進めることができなかった。 従来の窒素-タンパク質換算係数を全窒素量に乗じた際に生じるタンパク質量の過剰算定の問題を解消し、タンパク質量推定の精度を向上させるという目的は、3年間の研究により、ある程度達成されたと考えられる。アミノ酸組成に基づくタンパク質量の概念が国際的また施策的に広く適用されるまでは、食品のタンパク質量をできるだけ正確にまた簡便に把握するひとつの手段として、新規換算係数の適用は有効であると結論できる。
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