研究概要 |
中学生における「食の安心・安全」に関するカリキュラムを計画的行動理論を用いて立案し,超鏡(HyperMirror)による国際交流型の食教育授業を日本(公立,私立),タイ国(私立)間において,3年間継続する。1年目は"衛生行動"をテーマとし,「トイレの後の手洗いができる」,「食事・調理前の手洗いができる」を行動目標とした。授業構成は,導入としてHS(HyperStage)による学校訪問,衛生博士による「食中毒の3原則」についての解説,シート型培地による肉をさわった後の手洗い実験,ATPふき取り検査,「手洗いの歌」による正しい洗い方の実践,英語による国際交流の5部構成とした。授業の中に視覚的に結果を把握することが可能な実験を取り入れたことで,生徒に興味を持たせることができた。超鏡の評価では,タイ生徒の方が「同じ場所で活動している」等評価が高かった。日本側は,生徒の配置など映像の見え方に工夫が必要と思われた。授業前にフードマッピング調査と,前後に食と衛生に関する質問紙調査(衛生に関する知識,周囲の支援(主観的規範),関心,セルフエフィカシー(行動コントロール感),行動の実態)を行った。フードマッピング調査では,各食物の体への重要度と摂取頻度が関連していないなど食の認識がずれている生徒には,バランスよく食べることや間食のとり方について重点的に栄養教育する必要があることが示された。質問紙調査の結果では,3校とも知識と関心の問を除き,主観的規範,関心,セルフエフィカシーの3要素間には相互に有意な相関があった。4要素の平均得点には学校差はみられなかった。食教育授業後では,3校とも知識得点は上昇し,行動面では3校とも外食前の手洗い率,トイレ後の手洗い率が有意ではないものの増加傾向にあった。今後介入を続けることにより,「食の安心・安全」行動の改善や徹底につながることが期待される。
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