研究概要 |
中学生における「食の安心・安全」に関するカリキュラムを計画的行動理論を用いて立案し,超鏡(HyperMirror)による国際交流型の食教育授業を日本(公立,私立),タイ国(私立)間において,3年間継続した。3年目は"調理行動"をテーマとし,「安全な調理方法がわかる」,「安全な調理ができる」を行動目標とした。授業構成は,生徒による英語での学校紹介,コーラスやダンスの披露による国際交流,調理博士によるクイズを取り入れた「調理の流れと手順」,「肉をさわった手の実験結果」,「正しい手の洗い方」,「食品ラベルの見方(賞味期限)」,「調理時の身だしなみ」の解説,カードゲームによる「食中毒予防3原則」のまとめ,ハンバーグの中心温度を測定する調理実験,試食の5部構成とした。HMシステムとテレビ電話(Skype)を使用した。テレビ電話画面,講義用パワーポイント画面の切替表示とPC画面の共有化によりグラフ表示を行った。授業前にフードマッピング調査と,前後に調理行動に関する質問紙調査(調理に関する知識,周囲の支援(主観的規範),関心,セルフエフィカシー(行動コントロール感),行動の実態)を行った。フードマッピング調査では,日本は,どの食物も身体に大切なものをよく食べており,タイは,体に悪いと認識しているものをよく食べていた。質問紙調査の結果では,知識については,両国男女とも合計点は介入後に上昇した。調理についての関心度は性差がある。主観的規範はタイ男子のみ有意に低下した。行動コントロール感は両国とも上昇し,特に男子で上昇している。実際に調理実習をして「できる」という自信が上昇した点では介入の効果があったと考えられる。「計画的行動理論」のモデルは,両国とも男子で適合し,女子については両国とも当てはまりはよくなかった。女子の調理行動についてはその他の要因を今後検討する必要があると考えられる。
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