ビタミンC(アスコルビン酸)は野菜、果物などの食品のみならず、食品添加物としても様々な用途に広く用いられている。しかしながら、アスコルビン酸は調理・加工・貯蔵過程において容易に酸化されてデヒドロアスコルビン酸、さらに加水分解されジケトグロン酸が生成する。これらアスコルビン酸酸化生成物は反応性の高いジカルボニル構造を有することから、他の食品成分とのメイラード反応(グリケーション反応)が懸念される。近年、このメイラード反応が生体内においても進行し、種々の疾病の発症・進展と関わることが報告された。そこで、飲食物由来のメイラード反応生成物の健康への影響についても関心が向けられるようになってきた。本研究ではビタミンC、特に反応性が高いその酸化生成物と食品中タンパク質との反応生成物についてその安全性評価を行うことを目的とした。前年度までの結果を踏まえて、実際の消化管の中の状態により近い状態を再現するためにビタミンC由来後期糖化生成物(AGE)に人工消化を行った試料について、ヒト腸管上皮モデル細胞Caco-2で検討したところ増殖抑制がみられた。さらに、ビタミンC由来後期糖化生成物(AGE)の細胞への影響のメカニズムを明らかにするために、AGE受容体(RAGE)のmRNA発現をリアルタイムRT-PCR法により測定したところ、ジケトグロン酸由来AGEの処理により有意にRAGEの発現が上昇することが明らかになった。なお、ビタミンC由来後期糖化生成物(AGE)の細胞増殖への影響についてヒト正常小腸細胞FHs74Intを用いて調べたところ、Caco-2の場合と同様に増殖抑制が認められた。従って、食品中のビタミンC酸化生成物由来AGEが生体に影響を与え、その機構がRAGEを介する可能性が示唆された。
|