研究課題
本研究では、インスリン誘導性転写因子SAHRP-2遺伝子の発現を誘導できる活性をもつ食品として大豆イソフラボンのゲニステインと緑茶カテキンを取り上げ、その誘導メカニズムの解析を行った。昨年度、大豆イソフラボンのゲニステインが、PKCシグナル伝達経路を介して転写レベルでSHARP-2遺伝子の発現を誘導する可能性を報告した。PKCには様々なアイソフォームが存在する。そこで、今回、ゲニステインが、どのアイソフォームを活性化するかどうかについて解析した。まず、classical PKCの活性化剤であるPMAで処理を行ったラット肝癌細胞株であるH4IIE細胞からtotal RNAを調製し、リアルタイムPCR法を用いてSHARP-2 mRNAの発現量を測定した。その結果、SHARP-2遺伝子の発現は、ゲニステイン処理と同様2時間と非常に早期に誘導されたため、classical PKCの関与が示唆された。次に、ゲニステインで処理したラット肝癌細胞株であるH4IIE細胞から全細胞抽出液を調製し、抗PKCα抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行った。その結果、ゲニステイン処理後5分から15分で一過性に活性化型(リン酸化型)PKCαが誘導されることが明らかになった。一方、非リン酸化型PKCα量に変動は認められなかった。したがって、ゲニステインは、少なくともPKCαの活性化を介して、SHARP-2 mRNAを誘導したと結論した。さらに、SHARP-2遺伝子の転写活性に対する作用を検討したが、転写開始点上流3kb以内にはゲニステインに応答する転写制御領域は認められなかった。以上の結果をまとめて、英文学術論文として報告した。以前の研究で、緑茶カテキンのEGCGが、SHARP-2 mRNAの発現を誘導することを報告している。そのシグナル伝達経路の解析を行った。その結果、転写因子NF-kBの関与が示唆された。現在、EGCG処理により、NF-kBにいかなる影響を及ぼしているのかを検討している。
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Front.Biosci.
巻: E3 ページ: 1534-1540
http://www.matsumoto-u.ac.jp/matsumoto_u/teacher_hp/yamada/index.html