潰瘍性大腸炎とクローン病を代表とする難治性炎症性腸疾患は、近年増加の一途を辿り数年内には死因の第1位を占と予想される大腸癌のリスクファクターである。そのため、その予防・病状改善は大腸発癌の予防につながると考えられる。その発症病因は何らかの遺伝的素因がある宿主で腸内細菌、食事などの環境因子に対して腸管内で異常な免疫反応が惹起され炎症が生ずると考えられている。そこで、連携研究者の東口らが早期の経口・経腸栄養療法で腸管に対する著しい臨床効果(絶食による腸管粘膜の萎縮防止、腸管由来の免疫能促進など)を報告しているGFO(G:グルタミン、F:水溶性ファイバー、O:オリゴ糖)に注目し、その摂取が潰瘍性大腸炎に及ぼす影響をデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウスモデルで検討した。雌性ICRマウス(7週齢)を用い、2.5%DSS溶液を飲水として投与するとともに、基礎飼料に1、0.5、0.1%の割合でGFOを混合した混餌(GFO群)を与える誘発時期での検討を行った。なお、対照に水と基礎飼料(対照群)、DSSと基礎飼料(DSS群)の群を設けた。DSS投与開始7日後に解剖を行い大腸の長さを測定した。その結果、対照群に対してDSS群、GFO群とも有意に短縮していたが、0.1%GFO群はDSS群と比較すると有意に長く短縮の抑制がみられた。また、細胞増殖性マーカーである赤血球ポリアミン値は、スペルミジンとスペルミン値とも、対照群に対してDSS群(p<0.001)、0.1%GFO群(p<0.01)と有意に増加したが、GFO群の増加量は両値ともDSS群の約1/1.5であった。さらに、各群5例で病理組織学的検索を行ったところ、GFO群では結腸中位で粘膜下層の肥厚を抑制していた。しかし、糞便観察における血便の改善はみられなかった。現在、大腸粘膜の炎症性サイトカインmRNA発現レベルでの検討を行っている。
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