研究概要 |
(目的) 緑茶は世界で広く飲用されており、その主成分は(-)-epigallocatechin gallate (EGCG)であり、抗酸化作用を有することが報告されている。先に我々は、脳外傷後にフリーラジカルが産生され、フリーラジカルにより神経細胞のアポトーシスと脳機能障害が誘導されることを報告した。今回、ラット脳外傷モデルを用いてEGCG飲料による脳外傷後の神経保護作用と脳機能の改善効果を組織学的、生化学的及び行動学的手法を用いて調べた。 (方法及び結果) 6週齢Wistar ratsに0.1%ECGC(ECGC群)またはwater(water群)を与えて飼育し、10週齢で脳外傷を受傷させた。脳外傷後の早期にwater飲料群においてECGC飲料群に比較し損傷部位周囲組織でアポトーシスのマーカであるssDNA陽性細胞,酸化ストレスのマーカーである8-Hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)陽性細胞4-Hydroxy-2-nonenal(4-HNE)陽性細胞の有意な増加認めた(p<0.001)。加えてEGCG飲料群ではwater飲料群に比較し、malondialdehyde(MDA)量の有意な減少を認めた(p<O.05)。また、損傷部位周囲においてwater飲料群では多数のssDNAとNeuNの二重染色陽性細胞が認められたがEGCG飲料群ではssDNAとNeuN二重染色陽性細胞は,ほとんど認められなかった。さらに外傷後7日においてEGCG飲料群でwater飲料群に比較しNeuN陽性細胞数で有意な増加を認めた(p<0.05)。外傷後の脳機能評価においてEGCG飲料群ではwater飲料群に比較し、有意な改善効果が認められた(p<0.01)。 (考察) これらのことからEGCG飲料は脳外傷後に発生するフリーラジカルに対して抗酸化作用により、神経細胞やグリア細胞のアポトーシスを抑制し、神経保護作用を有することが示された。加えて、脳外傷後に起こる脳機能不全をEGCG飲料群は有意な改善効果をしめした。緑茶飲料は脳外傷の治療に非常に有効であることが示された。
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