以下の2つの研究を行った。 1)こくを生じる物質として知られるグルタチオン(GSH)の味覚作用について マウスを用い、行動実験と電気生理学的実験を行った。先ず、GSHそのものの味を知るため、味覚嫌悪条件づけ法により嫌悪の汎行パターンを調べると、うま味溶液にには汎化しなかったことから、うま味とは異なる味を有することが示された。グルタミン酸カリウム(MPG)とイノシン酸ナトリウム(IMP)の溶液にGSHを添加すると、溶液に対する嗜好性が増大した。とくに、IMPとの混合で大きく増大した。味覚神経(鼓索神経と舌咽神経)の味応答を調べると、IMPとGSHGの混合の場合に相乗的に大きな応答が得られた。GSHはIMPのおいしさを増大させる可能性が示唆される。そして、この効果がこくの背後にあるひとつのメカニズムの可能性がある。 2)人における味覚検査法の考案とその応用 今年度は、人に対して簡便かつ正確に味覚感受性を検査する方法を考案した。5基本味(甘味としてショ糖、塩味として塩化ナトリウム、酸味としてクエン酸、苦味としてスクロースオクタアセテート、うま味としてグルタミン酸ナトリウム)の閾値付近の5段階の溶液核4mlずつを順次味わって、弁別閾、知覚閾を求めた。大学生約100人に対してテストを行い、本味覚検査キットが有効に味覚閾値の計測に使えることが確認できた。次年度以降、この方法を用いて、各年齢層の人や、異なった国の人についてデータを得て、比較検討する予定である。
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