主として以下の2つの研究を行った。 1) 人における年齢横断的味覚感受性測定 年度本研究課題のもとで我々が開発した畿央大学式味覚テストを用いることにより、数10名の被験者に対して同時にかつ簡便に味覚感受性を検査することができることが確認された。大学生から得られた結果は従来の報告とほぼ一致することが分かった。また、各年齢層間での知覚閾、味の正解率などの比較が可能であることも確認できた。苦味の知覚閾は、高校生以下で低下し、幼児では最も感受性が高い傾向にあった。各年齢層のうま味に対する正解率は、中学生、高校生、大学生、成人が61.5%~83.3%で、小学生以下と70歳以上が45.7%、35.7%と低い傾向にあった。うま味に関して、幼児や高齢者は、大学生と比べて、知覚閾にはほとんど差がないものの、正解率が悪いという特徴が認められた。 2) fNIRS法によるおいしさの客観的計測 近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)を用いて、被験者がおいしいと思う食べ物、まずいと思う食べ物を実際に咀嚼・嚥下したときの脳の酸素化ヘモグロビンを測定した。その結果、前頭前野から記録したときに特徴的な情動性を反映した活動が得られた。すなわし、おいしいときには、酸素化ヘモグロビンの量が低下し、まずいときには増加する傾向にあった。また、被験者の好みの音楽や、甘味など好みの味に対しても酸素化ヘモグロビンの低下が認められた。次年度はこれらの現象をより詳細に検討し、おいしさの客観的計測の基礎を確立したい。
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