1.口腔保湿剤の水分保持能力 科研費で購入した水分計(センソリメーターSR100、CK社、ドイツ)を用いて、口腔保湿剤の水分保持能力を測るin vitro測定法(ろ紙試験法)を開発した。口腔乾燥症に対する対症療法として用いられる口腔保湿剤は要介護者の増加に伴い、多くの製品が販売されている。しかし、保湿剤の保湿能力を比較する客観的指標はなく、適用基準の確立はまだ不十分である。そこで、ろ紙を口腔粘膜、ヘアドライヤーによる温風を口腔の開閉と口呼吸時の乾燥空気になぞらえて、保湿剤の保湿(保水)能力を測定した。ろ紙試験法は3種類の市販保湿剤を用いて、保湿剤の残存水分量率と残存重量率の変化を算出したところ、各保湿剤の水分保持能力の差異を十分に判別できることが示唆された。 2.口腔乾燥症に適用される漢方製剤の調査 口腔乾燥の改善には漢方製剤が適用されることが多い。このため、口腔乾燥関連の漢方薬の口腔内に生じる石灰化に対する影響を調べておくことは重要であると考える。そこで、口腔乾燥症に適用される9種類の漢方薬についてin vitroリン酸カルシウム沈殿物形成反応に対する効果をpH低落法で研究した。十全大補湯[○!R]だけが無定形リン酸カルシウム(ACP)形成速度を抑制した。麦門冬湯[○!R]と白虎加人参湯[○!R]以外の7種類の漢方製剤はACPからハイドロキシアパタイト(HAP)への転換反応速度を対照の20~52%の範囲で抑制し、誘導時間を2.0~7.1倍に延長させた.麦門冬湯[○!R]と白虎加人参湯[○!R]は誘導時間のみを1.5~1.7倍延長させた.エチドロン酸との比較から、9種類の漢方製剤の歯磨剤や洗口剤に含まれる抗歯石剤としての可能性が示唆された.
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