研究課題/領域番号 |
21500810
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
榊原 隆三 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (30127229)
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研究分担者 |
深澤 昌史 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (20238439)
野嶽 勇一 長崎国際大学, 薬学部, 助教 (30332282)
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キーワード | 生理活性 / 食品 / 発酵 / 癌 / 乳酸菌 / 肝炎 / バイオジェニックス |
研究概要 |
我々は、豆乳を栄養源として得た新規乳酸菌代謝生産物質PS-B1に、幅広い癌細胞増殖抑制スペクトルや肝保全作用があることを明らかにしてきた。本年度においても、PS-B1が示すこれらの生理活性について、(1)分子レベルでの作用機序の解明、及び(2)生理活性を示す乳酸菌発酵成分の特定、の両面から研究を進めた。 まず、PS-B1が示すガン細胞増殖抑制作用についてであるが、ヒト前骨髄性白血病細胞HL-60を対象として、以下に挙げる研究結果から作用機序を推察するに至った。すなわち、HL-60細胞の培養液中へのカスパーゼ阻害剤の添加により、PS-B1が示すガン細胞増殖抑制作用が有意に解除されたことから、PS-B1がHL-60細胞に対してアポトーシスを誘導していることが示唆された。PS-B1を作用させたHL-60細胞を用いた分光学的解析から、(1)HL-60細胞内に取り込まれたPS-B1中の成分の影響により細胞内活性酸素種量が異常に増大、(2)増大した細胞内活性酸素種の影響を受けて還元型グルタチオンレベルが顕著に低下、(3)還元型グルタチオンの消去能を越えた過剰の細胞内活性酸素種が、シトクロムc等の放出を伴うミトコンドリアの不活化(膜電位の低下)を誘導、(4)エフェクター型カスパーゼ(-3)の活性の顕著な増大、(5)DNAの断片化、が判明した。これらのことが要因となり、HL-60細胞がアポトーシスに至ったと推察された。 次いで、ウイルス感染や薬剤服用を原因とする肝障害モデルを構築し、これらに対するPS-B1の影響を検討した。その結果、アルコール性肝障害モデルに対するPS-B1の肝保全作用の場合と同様に、両肝障害モデルにおいても活性酸素種量レベルの制御を介した有意な肝保全作用が実証された。さらに、PS-B1含有飼料を摂取させた正常ラットの肝臓においては、コラーゲン合成量が低下していることも明らかになった。
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