日本人の「食の原点」といえる「米」のタンパク質の栄養生理機能については、未だ解明されていない。一方、糖尿病、とくに2型糖尿病は生活習慣病の最たる疾病で、かつ腎疾患や高血圧症との関連性が密接であることが知られている。前年度までの研究成果で、ラットにおける米胚乳タンパク質(純度90%以上)の長期摂取(10週間)は、カゼイン飼料に比較して空腹時血糖値や血漿インスリン値に低下傾向がみられ、血漿アディポネクチン濃度を有意に上昇させて、インスリン応答や糖代謝調節維持に有効である可能性が示唆された。 そこで、今年度は糖尿病性腎症への移行阻止のための腎機能維持、および高血圧に対する米胚乳タンパク質の効果を視野に入れて、2型糖尿病自然発症モデルのGoto-Kakizaki(GK)雄ラット(7週齢)を用いて長期飼養試験を2回実施し、各種生体指標について再現性も含めて比較検討した。飼料組成は、病態をより明確するためにAIN-93Gのスクロース量を10→30%に増加させ、米胚乳タンパク質とカゼインはともにCP20%とした。コントロールとして、Wistar系ラット(カゼイン)も同条件下で飼育した。その結果、1週間ごとに測定した血糖値の経時変化、試験終了時の血漿インスリン濃度には差は認められなかったが、血漿アディポネクチン濃度は米胚乳タンパク質群が有意に高値であった。また、試験終了時の尿中微量アルブミン濃度(μg/mg crea)は、カゼイン群に比べて約36%も低値であった。それに加え、腎臓の画像解析から、米胚乳タンパク質群では皮質・皮髄境界部ともに有意に腎糸球体障害度(メサンギウム基質増加)が軽減していることが明らかになった。また、試験9週目に測定した血圧や試験終了時の腎臓のアンジオテンシン変換酵素活性、肝機能マーカー等においても、米胚乳タンパク質継続摂取の優位性が示された。
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