平成23年度は、北海道積丹半島の余市町浜中海岸を定点として、毎月1回打ち上げ貝類をはじめ海岸漂着物の調査や採集を行った。また、今年度は積丹半島沿岸の22地点の海岸において、春と秋に広域的な野外調査を試みた。継続的な調査研究の結果、クロヅケガイ、レイシガイ、チリボタン、イチゴキクザル、トリガイなどの暖流系貝類の打ち上げを確認した。これらの暖流系貝類の顕著な出現は、日本海北部の海面水温の上昇と相関しており、近年の地球温暖化の影響が示唆された。積丹半島における暖流系貝類の出現については、速報を投稿中である。一方、日本海沿岸の対馬暖流域における野外調査では、北海道利尻島、礼文島及び松前半島の海岸で、貝類を中心とする漂着物の調査や採集を試みた。これら離島での調査研究は、日本海対馬暖流域での貝類の漂着物多様性を見積もるための貴重な基礎データと考えられる。 一連の研究成果は漂着物学会はじめ各種学会で公表し、順次学会誌等で公表した。特に西南北海道松前半島におけるメダカラガイの大量漂着は、海面水温の上昇を示唆する地球温暖化の一例として注目された。今年度は、一昨年に作成したリーフレット「石狩のビーチコーミング」を漂着物の体験型環境教育の教材とし、学生の野外調査指導や教員の免許更新講習の資料として活用した。また、これらの行事では体験型プログラム(小冊子)も合わせて利用した。さらにリーフレットの内容に関するアンケートを実施し、アンケート結果については集計後に報告の予定である。
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