金星太陽面通過の周期パターンを解明するために万有引力と運動法則による金星、地球の公転運動3Dシミュレーションを試みた。NASA Eclipse Web Siteに紀元前2000年から4000年までの金星太陽面通過の予測値が掲載されており、これによれば長周期131.5±8年と短周期8年がいくつかのパターンで混在する時期が生じるほか121.5年の長周期のみが続く時期がある。金星、地球の軌道が交差していることを考慮した3次元の公転運動シミュレーションにより軌道要素(軌道半径、離心率、軌道交差角)のわずかな相違で現象の周期のパターンが変化すること、軌道半径については相対誤差10万分の一の精度が必要であることが分かった。 金星太陽面通過を理科教材として取り上げる際の太陽観察、観測・記録方法の検討を行った。太陽面上の金星は巨大な黒点ほどの大きさで遮光グラスを用いた肉眼で観察可能である。学校現場で用いるものとして多人数で安全に観測できる投影型の太陽望遠鏡が適していること、なかでもSunspotterは小型で構造も単純、操作も簡単で安全性も高い。現象の動画記録には普及しているビデオカメラを用いることができる。太陽の光学的拡大映像を得るためには望遠鏡に接続するよりビデオカメラ用テレコンバージョンレンズを使用するのが容易であり、遮光にはフィルムタイプの遮光フィルターが適しており、この方法で黒点の観測・記録を試みた(物理教育掲載論文「太陽の黒点観測」)。 これまでの考察や検討を整理、要約し日本物理教育学会(8月広島)、日本物理学会(3月西宮)で報告し、「大学の物理教育(日本物理学会)」に投稿した。研究成果報告書「金星太陽面通過の科学-ハレーが考えた太陽視差決定法-」(2012年3月発行、38ページ)を作成、配布し研究成果の普及に努めている。
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