研究概要 |
1.力学概念に関する標準調査問題の開発 アメリカで作成されたFCI,FMCEなどの力学概念調査標準問題を参考に,中学生の力と運動に関する概念形成の実態を調査するための標準調査問題を開発し,試行調査を行った.その結果,中学生の力学概念を調査するために必要な最小限の調査項目を特定することができ,同時に,中学生の持つ力学概念の問題点も明らかにすることができた. 2.力概念の形成を促進する新教材の開発 力表示器「Fi-Cube」の改良を行い,従来存在した使用上の制約をほとんど取り除くことに成功した.これによって,理科授業においてより利用しやすい教材となった.また,学校における普及をめざし,制作会社と共同研究を立ち上げ,市販化に向けた低価格化およびさらなる性能向上をめざした改良を実施した. 3.中学校における授業改善を目指した実験授業の実践 上記の「Fi-Cube」を用いた試行授業を中学校において5回実施した.事前調査と事後調査の比較から「Fi-Cube」の使用が中学生の力概念の形成に大きな効果を持つこと,また,その効果は2か月後においても持続していることなどを明らかにした. また,電圧概念の形成をめざした新しい教材「電位測定回路」を用いた試行授業を行った.事前事後調査の比較から,従来の授業では電圧概念の形成が不十分であること,「電位測定回路」を用いた授業が電圧概念の形成に有意な効果を持つことが確認できた. 4.学習指導要領の変更点に関する検討 大学生を対象とした概念調査から,新指導要領に新たに加えられた「重さと質量の違い」の扱いに関する問題点を明らかにした.ほとんどの学生が,「重さと質量は違う」と教えられたことにより,質量とは何かという問いに答えられなくなってしまい,この件に関する指導要領の記述の修正が急務であることが示された.
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