研究概要 |
平成23年度の研究目的,実施計画に基づき,中学生の「力と運動」単元の理解度向上をめざし,これまでの研究過程で開発した教材のより有効な利用方法を考案し,その効果を実証することを目指した. まず,前年度までに完成させた教材「Fi-Cube」を実践場面で活用するため,株式会社計測技研と共同研究をスタートし,合計300台の「Fi-Cube」を制作して全国の中学校・高等学校に貸与した.貸与は日本理科教育学会における発表等を通して,応募校を募集して実施した.平成23年度の貸与実績は,33校270台であった.貸与した学校からは実践記録を提出してもらった.「Fi-Cube」を利用した感想はおおむね好評であり,生徒からも「分かり易い」などの感想が寄せられた. また,栃木県内の中学校において,「Fi-Cube」を利用した中学校3年生「運動とエネルギー」単元の指導計画を立案し,その指導計画に基づく授業実践を実施した.授業前,授業後の生徒の理解度調査を実施し,新教材及びそれを用いた指導計画の有効性を調査した. その結果,従来通りの授業を行ったクラスにおいては,慣性の法則に関する理解が全く向上しなかったのに対して,新教材を用い新指導計画に基づく授業を実践したクラスにおいては,慣性の法則に関する設問の正答率が大幅に上昇したことが認められた. この理解度の上昇は,授業実践から1か月後の保持調査においても全く低下することはなかった.さらに,授業ではほとんど触れることがなかった応用的な設問に対しても正答率の有意な上昇が認められた.これらの結果から,新教材を用いて力概念の獲得が大きく進められることが明らかとなった.
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