研究概要 |
平成22年度は,昨年度実施したコア知識一覧表に対する理科教員・教育実習を控えた大学生の利用のニーズ調査結果を整理した。 理科教員・教育実習を控えた大学生への調査結果からは,コア知識一覧表が手元にあれば,授業計画時に既習内容とのつながりを意識したり,単元導入時に既習内容を振り返ったり,授業中にどの知識が重要になるのか意識したり,既習内容とのつながりを確認するようになることが伺えた。そして,コア知識一覧表は,理科教員や教員をめざす大学生が,単元間のつながりまで意識した授業を展開するのに役立つだろうということが確かめられた。 コア知識一覧表作成に携わった大学生の認識については,コア知識一覧表を作成することで,理科の学習内容・つながり・学習していなかった内容・身につけておきたい知識・重要となる知識が,はっきりしたと受けとめられたことが示された。 次に,2009年1月~3月に,千葉県内の公立中学校1年生2クラス46名(公立活用),国立大学法人教育学部附属中学校1年生1クラス41名(国立活用)で『物質の状態変化』の単元で,コア知識一覧表を用いた授業を試行した結果を整理して,コア知識一覧表改善の示唆を得た。試行授業でコア知識一覧表を用いたことにより,振り返りを促せたとは言えなかった。ただし,一覧表を活用したクラスでは,直接教えられなくても粒子モデルの使用率が増加し,特に公立活用では,「粒子の運動」が『物質の状態変化』とつながっていると認識され,事後の発展的課題では60%以上の生徒が粒子モデルを使って説明するようになっていたことが確認された。移行期間の粒子概念導入支援にコア知識一覧表を用いることも有効な手段であることが示されたが,一部には学習していない内容が提示されて混乱させていたので,新たな対応を検討したい。
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