研究概要 |
本研究は,第一に「新学習指導要領に対応した小・中学校理科全単元をつなぐコア知識一覧表を開発すること」,第二に「コア知識一覧表を利用しながら説明を促す授業を展開し,その有効性を実証すること」を研究目的として展開し,今年度が最終年度にあたる。 コア知識一覧表については,完成後も学部・大学院の授業や教員研修で紹介しながら検討して改訂を重ね,よりよいものに更新している。コア知識一覧表を利用しながら説明を促す授業については,小学校・中学校の『物質の状態変化』の単元や小学校5年の電磁石の学習で試行し,児童・生徒には「前の学年で学んだことを振り返ったり」「学習内容のつながりを意識するようになったり」すると感じられていた。そして,「粒子・粒子の運動」が『物質の状態変化』と,小学校3年で学んだ「電気はぐるっとひと回りできる回路(わ)を通る」「磁石につくものは鉄(鉄族のコバルト・ニッケルも)」が電磁石とつながっていると認識されて,発展的課題にもコア知識を適用してうまく説明できるようになっていた。その成果は,「山下修一(2011)小・中学校理科全単元をつなぐコア知識一覧表の利用意識と試行授業の影響,理科教育学研究」や「山下修一(2012)世界に通じる論理的思考・表現の育成,初等理科教育」に発表して公開した。 また,理科教員への調査からは,コア知識一覧表を利用できれば,単元間のつながりまで意識した授業を展開するようになると示されたので,教員研修・公開講演会など通じて,延べ3,000部程のコア知識一覧表を配布して,小学校・中学校の現場でも利用されている。さらに,本研究で開発したコア知識一覧表をもとにして,各単元ごとに具体的な授業のポイントやワークシートをデータベース化して,優れた日本の理科授業のポイントを若手教員に継承するプロジェクトも開始した。
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