平成24年から完全実施となる中学校の次期学習指導要領(理科)では、エネルギー資源に関連して放射線の性質と利用について触れることが求められている。しかし、放射線や放射能については、昔から中学校理科の中では全く扱われておらず、どのような教材を選んでどのように指導して行けばよいのかについての十分な情報が教員に行き渡っていないのが現状である。これに対し申請者らは以前より、「天然放射能の教材化」というテーマで放射線教育用の教材開発に長年取り組んでおり、主に大学生向けではあるが、安価で安全な実験方法を数多く開発している。そこで本研究では、当研究室に蓄積された多くのノウハウを活かして、現実に中学校の理科で用いることのできる実験法の開発を目指した。 これまでの研究では、文部科学省から無料で貸し出されている「はかるくんII」と、放射能温泉の泉水を組み合わせた実験が中心であったが、新指導要領実施後は、多くの中学校でほぼ同時期に測定器を必要とするため、現在貸し出されている「はかるくんII」では台数が不足し、十分な対応は期待できない。また、実験に使用する泉水は、地域によっては入手に困難を伴い、また含まれている核種の半減期が短く、入手後長期間の保存が不可能である。そこで、H22年度は、市販の測定器の中から生徒実験に使用できる安価で信頼性の高い測定器を選定・購入するとともに、入浴剤として市販されている、ラジウム温泉の湯の華を用いた簡易な実験方法を開発するために、種々の条件下で同浴剤から放出されるラドンガスの量を定量し、その具体的な使用方法を検討した。 また、上記の実験とともに、高速バスを利用し、自然放射線の強さが場所によって大きく異なることを示す基礎データを収集した。
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