平成23年度は、中学校理科の授業で使用可能な実験教材の開発とモジュール化された指導プログラムの完成を目指してきた。 前者については、ドライアイスや液体窒素を使用しないで済むように、氷+寒剤を用いた霧箱について検討を続けてきたが、-18℃で使用可能なアイスジェル(食品用冷却剤)を利用することでさらに、準備が容易な霧箱ができる見込みが得られたので、このタイプの霧箱の開発を重点的に行った。 最終的に開発された霧箱では、コールドプレート(アイスジェルをトランジスター等の冷却用フィンの中に封入し、これを家庭用冷凍庫に入れて-18℃まで冷やしたもの)を底部に使用し、この上に透明なポリカップで作成した観察用のチェンバーを置き、さらにその上にエタノール加熱用のお湯を入れた容器を置いた。観察チェンバー上部内面にはエタノールで浸したフェルトが取り付けられており、これがお湯を入れた容器で加熱されると、観察用チェンバー内にはエタノールの蒸気が放出され、下部にエタノール蒸気の過飽和領域が形成する。本霧箱では、セッティング後数分でα線(またはβ線)の飛跡が見え始め、この状態が約20分間継続する。したがって、この霧箱は生徒用の実験教材としては、十分な能力を持ち、またコールドプレートは冷凍庫で冷やすことで繰り返し使えるため、学校現場での実用性は高い。 一方、後者の指導プログラムについては、上記の霧箱の活用法についての検討が完了していないため、一部未完成であるが、概ね検討が済んでおり、H24年度以降に、本学で実施する教員研修や授業などで活用しながら完成を目指す予定である。
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