研究概要 |
数学だけでなくテレビ会議システム等のICT利用能力や英語によるプレゼンテーションとコミュニケーション能力を持ったエリート算数・数学教員を養成するための基礎資料として,ドイツのバイエルン州の教員養成制度とタイ国の教員研修制度について現地調査した。ドイツでは,多くの教育問題を抱えている基幹学校であるにも関わらず,数学及び数学教育科目を大学時代に履修していない教師が多く,問題解決のためにエリート数学教員の養成が急務であることが分かった。タイでは,科学技術教育振興研究所が教員研修を統括しており,TVを使った遠隔研修と各地域研修センターでの対面研修が行われ,3年間の研修と修了試験(合格率90%弱)によりエリート教員を養成している。 共同研究者であるErlangen-Nuernberg大学Weth教授を日本に招聘して情報交換や学校の視察を行った。さらに,日本・ドイツ・タイをTV会議で多地点接続し共同研究者らによる日独数学教育セミナーを開催し,ドイツの教員養成システムと課題について討議した。また,日本の学生が方程式,数の拡張,体積の指導について英語でプレゼンし,対面式ではあったがWeth教授を交えた協同ゼミを実施した。日本の内容は先行研究が中心であり,課題の指摘はできるが具体的新提案ができない点をWeth教授から指摘されるなど,歴史や先行研究から教材研究を始める日本と,現場での課題の直接的解決策を中心に研究を進めるドイツというように,学生への研究指導の違いが明らかになった。 協同授業用の内容として,小学生への連立方程式の指導と中・高校生への日時計の指導を取り上げ,それらの教材化と国内での予備実験授業を行った。さらに,国際協同授業評価のための創造性態度テストの改良を始めた。 なお,ドイツ数学教育学会(GDM)にて,本研究の目的とその意義,実践事例について口頭発表した。
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